Engineering Design とは
(別府俊幸、『エンジニアリング・デザインの教科書』より)
日本語の「デザイン」に対して英語の “design” は、はるかに広い概念を含みます。”design” は、企画立案から始め、構想をまとめ、技術を開発し、原案を作り、その原案が意図に添っているかを確認し、「設計図」として集約するまでのプロセスすべてを表す言葉です。そして “engineering design” における ”design” は、これらすべてを網羅して表しています。つまり「エンジニアリング・デザイン」とは、「エンジニアリングに係わるモノ」を、考え始めてから完成するまでのプロセスです。エンジニアリング・デザイン・プロセスと呼ぶ方が、よりわかりやすいかもしれません。
「エンジニアリングに係わるモノ」とは、これも考えると難しいのですが、とりあえずは “設計図のある製品やシステム” とします。エンジニアリングに係わるモノは、設計(デザイン)が先にあり、そのデザインにあわせて製造あるいは施工されるからです。
では、カタカナ言葉「エンジニアリング・デザイン」を日本語にするとどうなるか。ちょっと長ったらしいですが「製品・システム企画開発設計方法論」と訳します。
「工学」をあえて抜かしていますが、「製品」とは、工場で作られたもの、あるいはその製造において工学が関わっているモノを指す語です。どうでしょう、「製品」を思い浮かべてください。家電製品や工業製品はいうに及ばず、化学製品や繊維製品、文具製品や生活消費財など、工場で製造されたモノがイメージされるでしょう。岩波書店『広辞苑』には、ズバリ「製造した品物」とあります。職人の手による工芸品や、芸術家の手による美術品を製品とはよびません。
また、道路やビルなどの構造物や建造物、電力や水道などのライフライン、通信ネットワークなどは「製品」とは呼びませんが、これらもやはりだれかがデザインした「システム」です。そしていうまでもなくシステムの構築にはエンジニアリングが関わっています。
これらの製品やシステムでは、製造や施工に先立ってデザインが完成されています。そのデザインを、企画立案から始め、構想をまとめ、技術を開発し、原案を作り、その原案が意図に添っているかを確認し、「設計図」として集約するための理論と技術がエンジニアリング・デザイン、すなわち製品・システム企画開発設計方法論です。

図 エンジニアリング・デザイン・プロセス