エンジニアリング・デザイン・ラボを開設しました
- Toshiyuki Beppu
- 2024年6月11日
- 読了時間: 3分
更新日:3月14日

設計開発に「エンジニアリング・デザイン」を役立てていただきたいと願って、ホームページを開設しました。
私は、2004年ころよりエンジニアリング・デザイン教育に携わってきました。といっても、最初の頃は「エンジニアリング・デザイン」とは何者かがわかっていませんでした。
もともと、高専(大学も)の教育課程には「ものづくり」の機会が少ないと感じていましたので、いくつかの製作演習を企画して導入していました。『作品』を作る演習では、式を覚えて答を求める授業科目と異なり、創意工夫が求められます。簡単な回路やプログラムであっても、どうまとめるかを自分自身で考えます。その作る過程では、いろいろな物事を統合するチカラが鍛えられます。
でも、「ものづくり」と「エンジニアリング・デザイン」がどう違うのかは、「?」でした。
もちろん、わからないことを教えるなんて不可能です。私は、Engineering Design について勉強を始めました。2006年にカリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD) で2ヶ月間の ”International Engineering Design” セミナーを受講しました。そして、Engineering Design とは『製品』を作るための技術と方法論だと理解しました。『作品』を作るだけでは学べない多くの事柄が、Engineering Design にはあるのです。
UCSD のセミナーで用いた教科書 N.Cross, ”Engineering Design Methods” にも驚きました。私自身は大学の工学部を卒業し大学院の理工学部で修士課程を修めましたが、そこでは教わることのなかった『デザインとは何か』について、しっかりと解説されています。そして、どうデザインをまとめるかを記してあります。自分の頭の中に暗黙知としてあったデザインをまとめるプロセスが、明文化・言語化されて客観的な知識(形式知)として記されています。
これは日本の学生さんにも有用な内容であると確信し、2007年に邦訳して出版しました(邦題『エンジニアリングデザイン(培風館)』。残念ながら絶版)。
ただ、英文の教科書を何冊か読みましたが、欧米における Engineering Design は、我が国における製品の開発とは差異があるように感じました。その、私の抱いた違和感を埋めるべく、また、教育のためにもエンジニアリング・デザインの調査研究を続けました。その中では、より根本的な命題である『工学とは何か』についても考えました。
私の考えは、2018年に『エンジニアリング・デザインの教科書(平凡社)』として上梓しました。まとめるまでに10年を要してしまいましたが、エンジニアを志す学生さんたちに、さらに、キャリアを始められた若い方々にも参考になる内容と自負しています。
エンジニアリング・デザインを理解することが、よりすぐれた製品を開発するチカラにつながると考えます。
私は、この春で定年となり高専を離れました。これからは、さらに多くのエンジニアとエンジニアを志す学生の方々に、これまでよりも優れた製品やシステムを開発・製造してもらうために、私の知見をお話ししたいと考えています。
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